夏休みと航空中耳炎

夏休みと航空中耳炎

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2017.7.19

夏休みが間近です。今年の東北地方は猛暑空梅雨で,耳鼻科は開店休業状態です。

耳鼻科医は毎年お盆や正月または大型連休前に同じ質問を受けます。それは「飛行機に乗っても大丈夫ですか」という質問です。

これは子供が中耳炎の場合や,中耳炎を繰り返しているような人からよく受けるものです。

飛行機に乗るとなぜ耳が痛くなるのでしょう。

飛行機に乗って耳の痛みを感じるのは飛行機が高度を徐々に下げている状態です。上空は空気が薄く(気圧が低く)地上は空気が濃い(気圧が高い)ので,飛行機が高度を下げると鼓膜は気圧に押されて内側に凹みます。つまりこの時の痛みは鼓膜が気圧に押されて引き伸ばされる痛みです。鼓膜を引き伸ばす力が強いほど痛みが強いということです。

このとき,鼓膜の可撓性(かとうせい)が問題になります。可撓性というのは変形のしやすさです。中耳炎を長く病んだ鼓膜は,鼓膜が薄くなることで容易に引き伸ばされるようになるか,あるいは逆に固くなって伸びにくくなるかのどちらかです。

薄くなった鼓膜は簡単に伸びるので鼓膜にかかる力は吸収されてしまいます。つまりこのような耳はそれほど痛くありません。

一方正常な鼓膜や中耳炎で固くなった鼓膜はそれほど容易には伸びません。鼓膜にかかる力が鼓膜自身の変形することで吸収されることなく,高度を下げるほど鼓膜にかかる張力を増していきます。高度が下がるほどどんどん力を増して痛みはさらに強くなります。

つまり,しっかりとした固さを持った鼓膜のほうが痛みが強く出る,ということになります。中耳炎の病歴だけでは耳の痛みは出現するかどうか単純に割り切れません。鼓膜を見れば大方予想できます。急性中耳炎の回復期では鼓膜はやや厚さと固さを増しているので,中耳炎が治りかけているような状況でも飛行機はちょっと辛いかもしれません。

子供の場合ですが,大人よりも耳が弱いと思うかもしれませんが案外大丈夫です。中耳の気圧調節の主役を演じる耳管が短くて太いせいか,外圧の変化に対しては大人より順応性が高いようです。事実,子供の航空中耳炎を診る機会は殆どありません。

子供については気にせず乗ってみてください。旅行先で耳鼻科にかからなければならないようなことはまず起きません。多少耳の不快感を訴えたり痛いなどと言うかもしれませんが飛行機から降りればケロッとしていますよ。