開業医は死なれないのか

地方の開業医の高齢化が進行している。

私の所属する医師会の診療所開業医49名の平均年齢は64歳である。私の年齢(55歳)で開業医の中では中堅の下というところになる。80歳を超えてなお仕事を続けられている方が4名,70歳代の医師が13名いる。

高齢の患者さんと話をするのは,やはり高齢の先生が適している。同様の苦労を共有できることが地域診療においては間違いなくプラスに働く。若い先生には申し訳ないが,遠くに暮らす子供らに対する思いや孫の成長への喜び,高齢者の気持ちはやはり高齢者でないと分からない。高齢化の進む地域社会において医師が高齢であることはむしろ良いことだといえる。

しかし問題はむしろここからである。

多くの開業医が70代で閉院することを考えると,これから10年以内にこの地区の開業医10数名ほどが診療をやめる予測が立つ。私の聞き及んだ範囲では後継者がいるという話は寡聞にして耳に入ってこない。おそらく閉院ということになるだろう。

今まで数年に1件ほどのペースで新たな開業が生じている。開業医の減少をビジネスチャンスとみて開業が増える可能性はあるが,それが地元の総合病院からの流れである場合は,今度はそちらに欠員が生じることになる。いまその欠員を埋められるほど潤沢な医師を抱える大学医局は少ない。下手をすると病院から常勤医を引き上げて非常勤にする可能性もある。

どこかの穴を埋めるとまたどこかに新しい穴ができる。いま日本の医療はそのような状況にある。開業医に定年退職がないのが唯一の救いだろう。時代は第二第三の日野原重明先生を求めているということだろうか。