インフルエンザは社会病

インフルエンザが猖獗(しょうけつ)を極めている……ことになっている。史上最多の患者数などと若いアナウンサーは目ぢからを増して訴える。

しかし現場にいる者としてはなんとも釈然としない。典型的なインフルエンザの患者は10~20人にひとりほどで残りの殆どは普通のカゼと区別がつかないほどの軽症である。目ぢからを入れるほどなのかいと突っ込みたくもなるだろう。

インフルエンザは命にかかわる病気だから厳しく管理しなければならない。などというご立派な声も,反論を覚悟で言えば眉唾だと思う。テレビではインフルエンザに関連した死亡例を伝えるが,数から言えば世のお年寄りの命定めは普通感冒つまりふつうのカゼだ。インフルエンザではなく普通のカゼで体調を壊して亡くなっている人が圧倒的に多いことは間違いない。だがそんなことは一切伝えられない。悪者としてのインフルエンザありきというシナリオが既にできているのである。

インフルエンザの検査がない時代,インフルエンザの判定は症状に頼られていた。急激な発熱と高熱の持続,強い倦怠感と全身痛などである。しかし検査が行われるようになるとその数倍以上の軽症者が隠れていることが分かってきた。さらに最近では,家族が全員がインフルエンザに感染してるというごく軽いカゼ症状がある患者さんがいて,状況から考えてインフルエンザウイルスに感染しているとしか考えられないのに,簡易検査は陰性という方が少なからずいることが分かってきた。今後さらに高感度のインフルエンザ検査キットが出回れば,そのような人からもウイルスが検出されるようになるかもしれない。

ウイルス検査が進むほど,人々はウイルスの有無に拘るようになって,さらに病気と非病気の区別ができなくなってしまう。既にインフルエンザは人間の病気ではなく社会の病気と化しているといっていい。(写真は本日の米代川)