耳鳴りと突発性難聴

耳鼻科でいちばん有名な病気といえば突発性難聴でしょうか。病名がそのまま体(たい)を表しているので俗耳にも馴染みやすい病気ですが原因についてはまだよく分かっていません。

治療としてはステロイドという薬を使うのですが,実はどれくらい効果があるのかはよく分かっていません。経過としては,完治が1/3,ある程度改善が1/3,治らない人が1/3といわれています。

芸能人でも数多く報告されています。浜崎あゆみさん,坂本龍一さん,堂本剛さんなど数多くの経験者がいます。一般人の発症率よりも明らかに高いようにみえます。睡眠不足,ストレス,大音響曝露など芸能人の仕事は耳の健康にも相当厳しいものがあるのでしょう。

後遺症としては難聴と耳鳴がありますが,厄介なのは耳鳴です。残念ながら残った耳鳴りが消えるということは滅多にありません。耳鳴りの治療は,耳鳴りを消すことではなく脳を耳鳴りに慣らすことを目的にしています。

たとえば貴方が静かな住宅地に住んでいたとします。そしてある時大都市の幹線道路や鉄道のそばに引越したとします。おそらく貴方はその騒音に眠りを邪魔されるでしょう。しかし殆どの人たちは徐々にその環境に慣れていきます。

刺激が一定の時,人間の脳はそれに慣れていきます。全く同じBGMがなり続ける場所に居続けるとBGMの存在を感じにくくなる,それが脳の性質です。耳鳴りの治療とは脳の慣れを導いたり慣れるまでの苦痛を軽減するためのものです。

耳鳴りの患者さんの多くは突発性難聴とは無関係です。実は私にも耳鳴りがあります。私の診察室は35~40dBほどで比較的静かですが,30dB以下の静かなところにいくと私の耳は「キーン」と鳴っています。統計によると約50%の人は耳鳴りを自覚することがあるということです。

病気ではない耳鳴りのほうが圧倒的に多いということです。

耳鳴りの多くは病気とは無関係ですが,難聴を伴って強くなっていく耳鳴りやトーンの変化する耳鳴りは耳の病気の可能性が高いので耳鼻科を受診してみてください。(写真は先日の長木川下町橋)