花粉症は自費診療になるのか

2020年度の診療報酬改定を前に,花粉症に白羽の矢が立った。花粉症を自費診療にすると600億円の医療費を減らせるのだという。医療系サイトに面白い調査結果が掲載されていて,花粉症の診療を行う診療科は反対するし,そうでない科は賛成し,直接経営に影響する開業医は反対し,多忙になっても収入に変化のない勤務医は反対する。面白いというか,当然といえば当然である。

医療費削減に向けて軽い病気を自費診療にしようという流れは今後も続くであろうし,それはやむを得ないと思いつつ,耳鼻科を生業とする身としては正直穏やかではない。ただ,これが実現可能な案であるかどうか冷静に見ると,相当難しそうである。その理由は,

1)花粉症はスギだけとは限らない。いくつかの花粉症を合わせ持っている患者さんにはひどい自己負担になる。

2)秋の花粉症と冬のハウスダストによるアレルギー性鼻炎を併せ持っている場合,どの線でふたつを分かつのか。「さて今日で花粉症が終わりました,あとはダニアレルギーの分だから保険診療です」などと簡単には分けられない。

3)市販薬と同等の薬だけ処方を自費診療とするならば,医療機関はそれとは違う処方をすることで自費診療となることを免れようとするから実効性には疑問がある。

4)内科疾患で通院中の人が花粉症も持っているような場合,花粉症の治療費分を自己診療とすると,保険診療の再診料と花粉症の初診料が合わせて取られることになる。そのような基本診察料の「二重取り」は実際には黙認されているが倫理上問題がある。しかしそれを禁止すると混合診療を認めることになる。

など,ツッコミどころはかなり多い。

ただ,今後のことを考えると,花粉症に偏重した耳鼻科診療が危険であることは間違いないところである。(写真は今の花粉症原因植物,長木川河川敷のブタクサ)